目次* 1. 台湾でBTC外貨準備化が議論に* 2. 台湾の外貨準備資産にビットコインを検討する理由 + 2.1. 台湾の外貨準備の現状と潜在的リスク + 2.2. ビットコインが資産保全として機能 + 2.3. 米国における国家備蓄化の動き + 2.4. 台湾国内および国際的なビットコイン評価の高まり + 2.5. 国家資産としてのビットコイン活用への期待* 3. 台湾におけるBTC外貨準備化の現実味## 台湾でBTC外貨準備化が議論に**台湾の国民党立法委員である葛如軍(ジュールン・グー)氏が2025年5月9日に、ビットコイン(BTC)を国家の戦略的外貨準備資産に組み入れるよう提案**しました。地元メディアによると、葛如軍氏は、近年の国際的な地政学リスクの高まりや金融市場における為替変動を背景に、ビットコインを金や外貨と並ぶ戦略的な準備資産として位置付け、金融システムの安定性を高めるべきだと主張しています。台湾中央銀行は今年3月に「ビットコインは価格変動が激しすぎる」として外貨準備への組み入れを一度は否定しました。しかし、その後発表されたデータでは、**新台湾ドルの価格変動率がビットコインの約3倍に達し、実際にはビットコインの方が安定していた**ことが明らかになっています。この中央銀行の決定は市場の現状を十分に考慮していない可能性があると見られており、結果としてビットコインの安全資産としての再評価につながっています。こうした状況を踏まえ、葛如軍氏らは「国家の準備資産を多様化し、ビットコインを戦略的準備の一部に加える検討が必要だ」と提言しています。## 台湾の外貨準備資産にビットコインを検討する理由葛如軍氏の提案の背景には、台湾の外貨準備を取り巻く現状とビットコインの特性があります。### 台湾の外貨準備の現状と潜在的リスク台湾は現在、約423トンもの金準備と、約5,770億ドル(約84.2兆円)の外貨準備高を保有していますが、そのうち9割超が米国債で運用されています。同氏は、輸出主導経済である台湾にとって、**この偏った資産構成は地政学的衝突や市場急変時に資産の安全性・流動性を損なうリスクがある**と指摘しました。こうした従来型の外貨準備運用方法が抱える潜在的なリスクに備えるため「**国家戦略として新たな金融手段を取り入れるべきだ**」と述べています。### ビットコインが資産保全として機能ビットコインが注目される理由は、その供給量が固定されていること、中央管理者が存在しない分散型の仕組み、そして政府などによる検閲や差し押さえに耐性がある抗検閲性といった特性にあります。ビットコインは運用開始から15年以上が経過し、こうした特質から「デジタルゴールド」の有力候補として位置づけられています。2023年に社会科学研究ネットワーク(SSRN)が発表した研究では、金融市場が急激に変動する局面においてビットコインと金の相関係数が0.6に達したことが報告されており、**ビットコインが金融市場の混乱時に価値を維持する安全資産として機能する可能性**を示しています。### 米国における国家備蓄化の動き世界各国が外貨準備にビットコインを組み入れ始めた事例は、この提案の妥当性を裏付けています。葛如軍氏らは、米国ではトランプ政権が没収したビットコインを国家備蓄資産として管理する方針を示した事例に触れ「ビットコインが戦略的価値を持つことを示すものだ」と指摘しました。さらに米国の各州でも、州政府の保有資産にビットコインを加える法案が次々に提案・可決されています。直近では、ニューハンプシャー州が公共資金の5%をビットコインに投資可能とする法案を成立させるなど、全米でBTC準備法案の法制化が広がっています。### 台湾国内および国際的なビットコイン評価の高まり台湾国内では、今年3月に開催された「ビットコイン国家備蓄フォーラム」において陳冲・前行政院長(元首相)が「ビットコインは通貨ではないが、インフレに抗する資産だ」と述べています。また、台湾大学の劉憶如教授も、欧米が無制限にお金を発行している状況において「**発行枚数が限られているビットコインはインフレに対する有効な対策になる**」と指摘しています。資産運用大手フィデリティによる調査では「**ビットコインの価格変動性は時間とともに低下し、価値の保存手段としての役割が着実に強まっている**」との分析結果が報告されています。対外貿易協会の黄志芳会長も「ビットコインの非中央集権的な特質は、台湾のように地政学的リスクを抱える地域において、単一法定通貨体制のリスクを回避する選択肢を提供する」と指摘しています。### 国家資産としてのビットコイン活用への期待このようにビットコインの有用性が様々な観点から示される中、葛如軍氏は**ビットコインを国家資産ポートフォリオの一つとして少額でも組み入れることで、主権財政の柔軟性とリスクヘッジ能力を高められると強調**しています。ビットコインだけで全てを解決するのではなく「デジタル時代の金(ゴールド)」とも呼ばれるビットコインを戦略的資産として組み入れ、将来的なリスクに備えるべきとの考えです。葛如軍氏は「賢明な国家は国家安全保障の手段を他国に委ねたりしない」と述べ、ビットコインのような新たな戦略資産を他国に先駆けて確保する重要性を訴えています。## 台湾におけるBTC外貨準備化の現実味ビットコインは、単なる投機的な仮想通貨(暗号資産)から国家戦略級の資産へと評価を高めつつあります。台湾でも葛如軍氏らの提言をきっかけに、政府が外貨準備へのビットコイン導入を本格的に検討し始めています。今後台湾政府が正式にビットコインを外貨準備資産に組み入れることを決定すれば、他国への影響も避けられないとの見方が強まっています。ビットコインが国家レベルの資産として位置付けられることで、仮想通貨全体の社会的な認知度や信頼性が向上することが期待されています。※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=145.91円)>>最新の仮想通貨ニュースはこちらSource:地元メディア「UDN」報道 執筆・翻訳:BITTIMES 編集部 サムネイル:AIによる生成画像
台湾議員「ビットコインを外貨準備資産に組み込むべき」価値の保存手段として評価
目次* 1. 台湾でBTC外貨準備化が議論に
台湾でBTC外貨準備化が議論に
台湾の国民党立法委員である葛如軍(ジュールン・グー)氏が2025年5月9日に、ビットコイン(BTC)を国家の戦略的外貨準備資産に組み入れるよう提案しました。
地元メディアによると、葛如軍氏は、近年の国際的な地政学リスクの高まりや金融市場における為替変動を背景に、ビットコインを金や外貨と並ぶ戦略的な準備資産として位置付け、金融システムの安定性を高めるべきだと主張しています。
台湾中央銀行は今年3月に「ビットコインは価格変動が激しすぎる」として外貨準備への組み入れを一度は否定しました。しかし、その後発表されたデータでは、新台湾ドルの価格変動率がビットコインの約3倍に達し、実際にはビットコインの方が安定していたことが明らかになっています。
この中央銀行の決定は市場の現状を十分に考慮していない可能性があると見られており、結果としてビットコインの安全資産としての再評価につながっています。
こうした状況を踏まえ、葛如軍氏らは「国家の準備資産を多様化し、ビットコインを戦略的準備の一部に加える検討が必要だ」と提言しています。
台湾の外貨準備資産にビットコインを検討する理由
葛如軍氏の提案の背景には、台湾の外貨準備を取り巻く現状とビットコインの特性があります。
台湾の外貨準備の現状と潜在的リスク
台湾は現在、約423トンもの金準備と、約5,770億ドル(約84.2兆円)の外貨準備高を保有していますが、そのうち9割超が米国債で運用されています。
同氏は、輸出主導経済である台湾にとって、この偏った資産構成は地政学的衝突や市場急変時に資産の安全性・流動性を損なうリスクがあると指摘しました。
こうした従来型の外貨準備運用方法が抱える潜在的なリスクに備えるため「国家戦略として新たな金融手段を取り入れるべきだ」と述べています。
ビットコインが資産保全として機能
ビットコインが注目される理由は、その供給量が固定されていること、中央管理者が存在しない分散型の仕組み、そして政府などによる検閲や差し押さえに耐性がある抗検閲性といった特性にあります。
ビットコインは運用開始から15年以上が経過し、こうした特質から「デジタルゴールド」の有力候補として位置づけられています。
2023年に社会科学研究ネットワーク(SSRN)が発表した研究では、金融市場が急激に変動する局面においてビットコインと金の相関係数が0.6に達したことが報告されており、ビットコインが金融市場の混乱時に価値を維持する安全資産として機能する可能性を示しています。
米国における国家備蓄化の動き
世界各国が外貨準備にビットコインを組み入れ始めた事例は、この提案の妥当性を裏付けています。
葛如軍氏らは、米国ではトランプ政権が没収したビットコインを国家備蓄資産として管理する方針を示した事例に触れ「ビットコインが戦略的価値を持つことを示すものだ」と指摘しました。
さらに米国の各州でも、州政府の保有資産にビットコインを加える法案が次々に提案・可決されています。
直近では、ニューハンプシャー州が公共資金の5%をビットコインに投資可能とする法案を成立させるなど、全米でBTC準備法案の法制化が広がっています。
台湾国内および国際的なビットコイン評価の高まり
台湾国内では、今年3月に開催された「ビットコイン国家備蓄フォーラム」において陳冲・前行政院長(元首相)が「ビットコインは通貨ではないが、インフレに抗する資産だ」と述べています。
また、台湾大学の劉憶如教授も、欧米が無制限にお金を発行している状況において「発行枚数が限られているビットコインはインフレに対する有効な対策になる」と指摘しています。
資産運用大手フィデリティによる調査では「ビットコインの価格変動性は時間とともに低下し、価値の保存手段としての役割が着実に強まっている」との分析結果が報告されています。
対外貿易協会の黄志芳会長も「ビットコインの非中央集権的な特質は、台湾のように地政学的リスクを抱える地域において、単一法定通貨体制のリスクを回避する選択肢を提供する」と指摘しています。
国家資産としてのビットコイン活用への期待
このようにビットコインの有用性が様々な観点から示される中、葛如軍氏はビットコインを国家資産ポートフォリオの一つとして少額でも組み入れることで、主権財政の柔軟性とリスクヘッジ能力を高められると強調しています。
ビットコインだけで全てを解決するのではなく「デジタル時代の金(ゴールド)」とも呼ばれるビットコインを戦略的資産として組み入れ、将来的なリスクに備えるべきとの考えです。
葛如軍氏は「賢明な国家は国家安全保障の手段を他国に委ねたりしない」と述べ、ビットコインのような新たな戦略資産を他国に先駆けて確保する重要性を訴えています。
台湾におけるBTC外貨準備化の現実味
ビットコインは、単なる投機的な仮想通貨(暗号資産)から国家戦略級の資産へと評価を高めつつあります。
台湾でも葛如軍氏らの提言をきっかけに、政府が外貨準備へのビットコイン導入を本格的に検討し始めています。
今後台湾政府が正式にビットコインを外貨準備資産に組み入れることを決定すれば、他国への影響も避けられないとの見方が強まっています。
ビットコインが国家レベルの資産として位置付けられることで、仮想通貨全体の社会的な認知度や信頼性が向上することが期待されています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=145.91円)
Source:地元メディア「UDN」報道
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像